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通し柱不要論

河野です。
僕らが建てている住宅は在来工法と呼ばれる、柱や梁と言われる部材を繋ぎ合わせる骨組みの組み方です。
面ではなく、線を積み重ねて家にしていきます。

その中でも、通し柱と言われる一階から二階まで突き抜ける長さ6mほどの長い柱について、今日は書きます。


いきなり結論を書きますが、通し柱は不要です(^○^)

在来工法であれば、通し柱を用いた方が安全だと考える建築士も、多いです。
ただ、家を建てる現場を見れば4寸(120ミリ)程度の通し柱が、如何に危なげであるかは見れば伝わると思います。
通し柱はその性質上、二階の床を構築する梁がちょうど人間でいうお腹の辺りに突き刺さってきます。
その突き刺さった梁が何カ所あるかで、二方差し、三方差し、四方差しと増えます。

さて、お腹に前後左右から突っ張り棒を突き付けられたとしましょう。
そこに大地震が襲ってきます。
上下もしくは左右に揺らされる体。
突き付けられた突っ張り棒。
痛いです。

身体であれば、痛いと言ったり、逃げたりも出来なくは無いですが、通し柱は逃げ場なし。
行き場を失った力は、通し柱に負担を求め、折れます。
そうなると、家の構造はダメになります。
これは、在来工法で起こりがちな事故です。
上棟と言われる棟上げでも、通し柱に四方差しで差さった梁を上手に組んで柱をゆっくり起こさないと、ポキンと簡単に折れます。
これは、断面欠損(柱の肉厚が欠けて、少ない事)が大きい為に、こういう事が起こります。

過去、僕も2度ほど折れたのを見たり、聞いたりしていたものですから、10年前くらいから僕が設計する家は通し柱を無くしています。その方が構造的に強いからです。
昔は、建築確認申請という図面確認の段階で注意されたことも有ります。
「通し柱を図示してください!」と。

しかし、ちゃんと法律に書いてあります。

建築基準法施行令の第43条5項
5 階数が2以上の建築物におけるすみ柱又はこれに準ずる柱は、通し柱としなければならない。ただし、接合部を通し柱と同等以上の耐力を有するように補強した場合においては、この限りでない。

前半だけ読むと、なるほど確かに通し柱にせよ。と書いてあります。
だがしかし!
後半部分を読むと、但し書きがあります。
ただし、接合部を通し柱と同等以上の耐力を有するように補強した場合はこの限りではない。という部分です。

もう少し乱暴に簡潔に言うと、
繋いだ所を、通し柱と同じくらい補強したら、別に通し柱で無くても良いで!
って読めます。

このように、法律でも但し書きによる例外は認められています。
例外という扱いにしろ、現場では通し柱は折れやすいのが共通認識です。
知らない人は、現場の組み立てを見た事が無いんだと思います。

そんな訳で、以前の図面確認審査では建築基準法施行令を持ち出して、話をした思い出があります。

最近は、比較的通し柱不要論を言う方が増えてきたので、通し柱を用いず、あえて管柱(くだばしら)で構造を組み立てる家も増えてきたように思います。

昔は通し柱が無い家は弱い!とか結構悪口を言われてたんですが、昔の家は通し柱が5寸や6寸などと太かったですからね。今は家の軽量化と大壁化が進んでスリム化して4寸(120ミリ)になってますので、昔と今では事情が違います。

そんな訳で、今の家づくりにおいては「通し柱は不要」だと考えています。

※どうしても使いたい方は、柱を太くして、真壁にすると骨太感が出て、見た目にも綺麗だし、構造的にも安定します。もしくはピン工法にするかですね。

以上、通し柱不要論でした。


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